ブログ制作演習課題

この記事は、先月14日に行なわれた、CoSTEPの「ブログ制作演習(選科生用)」の課題用に書いたものです。異様に長くてすみません。

私がやってみたい科学技術コミュニケーション

このブログにふらりとやってきた、もともと科学とは無縁な人も、「そんなものがあるんだ」と気付きの場になるような科学技術コミュニケーション、をしてみたい。

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演習にて、5号館のつぶやき先生の、ご自身のブログに対する考え方を聞いて、じゃぁ、こんな私に、今何ができそうなのか、すべきなのか、といろいろ考えました。けれども、結局は、既にあるこのブログについて、私が普段どんなことを考えてここにあれこれ科学ネタも(少しはがんばって)交えながら書いてるのか、という今の姿を説明することになるんじゃないかと思ったのです。実際、CoSTEPを受講し始めてから、「科学に関することを、もうちょっとは書こう」という意識は増えてるつもりです。

ブログを作ろうと思った最初のきっかけは、自分のホームページ(天文も趣味も)の更新がゆきづまってて、とにかく思いつくこといろいろを適当に書き散らしたくなったのと、育児中心で誰ともコミュニケーションできないところから、何とか脱出したい、と思ったからでした。はてなを選んだのは、友達がたまたまはてなでブログをやっていたからです。最初の頃は、とりあえずは目の前の育児のこととか、見てたドラマの感想とか、とにかく適当に書いて、気持ちを吐きだすのと、ブログに慣れるというのが先だったようです。

そのうち、もともと専門だった天文のことをちょこちょこ書いたあたりから、はてなのキーワードのシステムなのか、おとなり日記か、はたまた何かのつながりで、知らない人がぽつぽつと来るようになったのです。驚きでした。やがて、ちょっとしたやりとりになったり、励まし合ったり、意見交換したり、昔の友達がやってきたり、なんていうことが起こりました。ブログの、掲示板やMLなどとは違う、コミュニケーションのしやすさ感じたものです。それと同時に、自分自身にも気持ちに余裕が出てきて、知らない人のところにもコメント書いたり、トラックバックもしてみました。ブログのおもしろさを実感したのでした。

ふりかえって、大学院で天文学の研究をし、元・公開天文台研究員であった私は、育児が一段落したら、また、星のお話をしたり、最先端の天文学の研究成果を伝える仕事をしたい、とずっと考えていました。けれども、現実はやっぱりただの主婦です。やりたいことと今の状況とのギャップの大きさに、半ばあきらめのような状態でもありました。

一方で、仕事をやめてすぐに、妊娠・出産・育児の生活へと突入しました。そこでなんとなく気付いたのは、「これって医学などのお世話になってる、まさに、科学の分野じゃないか」ということでした。改めて周囲を見回せば、料理も家事も育児も何事も、科学や技術と関連することばかりです。この頃は、「天文じゃなくって医学を勉強していれば」とか「栄養学を勉強していれば」なんて、半分冗談でつぶやいていたものでした。そして、この気付きを誰かに伝えたい、そんな気持ちも芽生えてきたのでした。

そして今年、いろいろなきっかけが重なって、CoSTEPの選科生になり科学技術コミュニケーションを学ぶことになりました。最初の講義を受けて、この、もやもや考えていたことが、だんだんはっきりしてゆくのがわかりました。私のような主婦にもできる科学技術コミュニケーションがあったんです。いえ、こんな立場や経験をした人こそ、やるべきなのかもしれません。決して、以前に考えていた、天文台や観望会や公開講演会にやって来る人だけが、伝える対象ではなかったのです(id:camelopardalis:20060519)

と、大きな理想を掲げてはみましたが、私がきちんとみなさんに披露できる科学のネタなんて、まだまだたかが知れています。もともと専門だった天文学だってもうかなり忘れているでしょうし、最新の成果とも縁遠いです。そして、当然ながら、毎日いつも科学のことを考えているわけではありません。育児と家事(主婦業)が今の本業だし、過去も含め、趣味だってはまったものだって他にやってみたいことだってい〜っぱいあります(シンプルライフを目指したいくせに)。でも、こうして改めて科学技術コミュニケーションの勉強も始めたし、何よりもこういう経歴と、興味の範囲も広いことから、新しく知った事柄と科学(または他の事柄)を、頭の中でどうしても結びつけてしまうようなのです。

そういうものを、手軽にこのブログで書いてみたい、と思っているみたいです。過去に書き散らしたものの中から、比較的まともなもの(科学だけでなく、それを取り巻く事柄)を、拾ってみましょう。

  • 紙おむつを洗濯しちゃったけど、塩を入れるときれいになるって本当?(育児と家事と化学) id:camelopardalis:20060509
  • 天文学会の年会へ行きました。実はここ、保育室があるんですよ〜。(天文研究者の集まりと、育児支援) id:camelopardalis:20051007
  • 「ワニくんのふしぎなよるの」絵本は、作者が公開天文台に縁があったからできたんじゃないの?(絵本と公開天文台) id:camelopardalis:20060225

他の些細なエントリでも、「ちなみに」みたいな部分で、その何かの科学に関することを書いてるつもりみたいです、一応…。あとは、天文台とか科学館とか水族館とか、そういう方面への子連れお出かけの時に、なるべく「遊んだ」だけではなく、「ここは科学やその普及に関する場所」という視点も入れてるつもりです。それで、科学の入り口というか、キーワードや話題提供くらいのことをしてみたい、とあがいているようです。何げなく(いつもどおり)読んだ人が、このことに気付いて、何かのきっかけになったり、話がふくらんでくれたら、嬉しいなぁ〜、と、実は思っているところがあります。

そんなわけで、結局、私が、ブログを使って“今”やりたいことは、分野もしぼらず(多少は天文に偏るでしょうが)、興味の向くままに、科学とからめつついろいろ書く、ということのようです。そのためにも、天文関係者の私、科学技術コミュニケーターを目指す私、主婦の私、ボウケンジャーにはまった私、その他の顔…、分けて書くことはできないのでしょう。ブログを日記として、気軽に長く続けようとする時は、やはり、5号館のつぶやき先生のようなスタイルになるのではないかと思うのです(つまりはつぶやき系?)。ただし、書く人の立場が違えば話題も集まる人も違うわけで、全然違う路線で、ここもまた、気の向くままに進んでゆくような感じでしょう。

このような現状ですが、時々は一つ一つのネタを掘り下げたりして、質の高い科学の話題へと上昇させてゆくのが、今後の、科学技術(とコミュニケーション)の勉強次第なのでしょう。目標は、今は、そのあたりにあります。科学解説としてある程度しっかりしていて、来た人が意見を交わす、という、理想的コミュニケーションには、今は全くもってほど遠いのですが、このブログで、科学とその周辺の話題について、「そんなことがあったんだ〜」と思ってもらう、話ができる手助けができれば、そんなふうに思うのです。

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と、ここまで、「『今の状況でできる(やってる)』ブログを使った科学技術コミュニケーション」を書いてきました。それに加えて、今後の可能性として、演習で指摘していただいたこと、考えたことを2つほど、補足として書いておきたいと思います(にしては長いぞ、コラ!)。

補足(1) 夫の観察日記が書けるのか?

演習の最後の私の質問から話が進んで、5号館のつぶやき先生は「(コミュニケーター自身が科学者・専門家でないことも多いので)自由に使える(ブログのネタにできる)科学者が身近にいるといいよね」というようなことをおっしゃっておりました。

自由に使える科学者!? うちにいます。はっきりここで書いたことはありませんでしたが、夫は天文学者で某大学の教員です。一応は、若手研究者と言えるでしょう。

そういう年代の人こそ、今やっている科学の研究について、ブログで広く発信できれば、それはとってもおもしろい、わくわくするものになるでしょう。しかし、本人には全くそんな時間はありません(私がブログを書いてるって聞いて、「いいね、暇で」と言ってきたくらい…。orz)。もちろん、夫に限らず、多くの研究者が「そんな時間はない」と思っているでしょう。

そこで、先生は、身近な科学者から話を聞いて、科学者に代わってコミュニケーターがブログで発信できればばいいね、ということをおっしゃったのです。

実は、天文学者の奥様がその生活をつづっている、この業界では有名なページがあるのです(天文台マダム日記)。ただし、ここは、ブログでも日記でもなく、ホームページの形式ですので、毎日のように更新があるわけではありません。が、いずれにせよ、天文学研究者(とその家族?)のちょっと変わった日常を読みたいと思っている人は多いということは、ここへの関心が高いことから知っていました。

けれども、そう簡単にブログ形式で毎日のように、というのは、我が家に関しては無理そうだなぁ〜、というのが正直な結論です。何故って、よくよく考えたのですが、うちの情報が出過ぎてしまうような気がしてならないのです。夫にそうあれこれ取材するのもかわいそうなような…(ネタにされてるという意味で)。それにそれに、私は、先のCoSTEPの情報収集演習で気付いたように、「“自分が”体験したことを発信したい」タイプなんです(id:camelopardalis:20060813)。

折角、元公開天文台研究員という経験とか、もっと他の研究者とのパイプもあるのですから、できれば、自分自身が見聞き、体験したことを書きたいのです。そのためにも、今後積極的に接する機会を増やしたい、そう思うのでした。まずは、来週の天文学会の年会から、かなぁ〜?

補足(2) エコに興味あるママ向けコミュニティ

主婦やママのみなさんは本当に科学に縁遠い、けれども、生活や社会に密着する科学の知識を本当は知らなければならない人、というのは、講義でも何度か指摘されたことのあるとおりです。けれども、では、どうやってそういったみなさんに、科学に接してもららえるようにするのでしょうか? 新聞に書いても科学面なんて多分読まないし、科学館のイベントへ行くとも思えないし(子供と一緒なら…?)。主たる興味対象といえば、料理、節約、収納、ワイドショー、そんな感じ? 最近では、ハンカチ王子斉藤佑樹くんでしょうか?(野球の魅力ってやっぱりすごいね〜)

話がそれましたが、そんなわけで、そんな女性のみなさん全てを漠然としたターゲットにして科学技術コミュニケーション(の入り口)をしよう、というのは、非常に難しいような気がしてなりません。

そんな困難はありますが、ちょっとおもしろい雑誌を知っているので、ここで紹介したいと思います。というか、もう何度かこのブログでも出てますが、日経BP社から出ているecomom[エコマム]という雑誌です。なんと、登録すれば“無料で”配達されるのです。実は、日経エコロジーの別冊、という側面も持っています。「家族と自然にやさしい暮らし」をテーマにしたecomomは、普通の主婦雑誌と似てるようで違ってます。取り上げる題材は、例えば、料理だったり家事だっりして同じようなのですが、「旬のものをおいしく食べましょう」(節約のためにわけのわからない激安食品を求めましょうとは言わない)とか、「楽しく暮らすためには、物(家電から雑貨まで)を上手に使いましょう、いい製品を見極められるようにしましょう」みたいな感じなのです。もちろん、「エコ」がタイトルにあるだけに、「自然とふれあおう」「環境にやさしいものを」といった意識もふんだんに感じられます。

旬の野菜と食を考えれば、植物としての野菜や、農業問題へも関心が移るでしょう。良い物を見極めるためには、それに使われている技術や特徴もよく知らなければならないこともあるでしょう。

この読者ならば、環境や科学(科学と気付いていないだけで、実はそれは科学の成果だったりする)を自然と理解したい人なのではと思うのです。そして、さらにもう一歩ふみこんだ科学技術コミュニケーションができるかもしれません。

そう考えたのも、実は、この雑誌の公式ブログの募集があったからなんです。読者向けに、何か科学(応募時点では天文)の話をブログで書いてみたい、と思ったのでした。けれども、見事に落選いたしました〜(天文はさすがに、エコとママから遠かったのでしょう)。そして、雑誌のコンセプトに合ったいろいろなもの6本が、公式ブログとしてスタートしました。

その後、選ばれた公式ブログはこの春からエコマムコミュニティーへと変わりました。要は、「私も何か書きたい」と思ってる人が他にもたくさんいらっしゃったようで、ブログではなく、オープンなSNSのコミュニティーをたくさん作れる場へと、引っ越したのでした。今のところ、編集部のコミュニティーに参加している人が600名近くいるので、雑誌読者のうちこのくらいの人が、コミュニティーに自主的に登録したということになります。

ならば私も科学ネタで新しいコミュニティーを! と、最初の頃は考えました。しかし、考えるうちに、自分のブログとの区別をどうつけるかがわからなくなってしまったのです。どうせ、あんまりつっこんだ話は書けないし、ブログに書くか、コミュニティーに書くかできっと悩むでしょうし。

折角の場を使えないでいる、というもどかしさもちょっとあるのですが、今のところは、最初の公式の6本のコミュニティーにコメントをあれこれ書いたりして、みなさんとコミュニケーションを楽しみつつ、私が持つ科学ネタにもふれたいと思っている、といった感じです。実は、このブログにコメントくださったことのある、ときママさんまこのすけさんなくつさんポンポコさんは、こちらの公式コミュニティーの方なんですよ。本当にありがとう! ポンポコさんやなくつさんのところには、こちらでも思ったりしたことを書いてトラックバックもいたしました(id:camelopardalis:20060217とid:camelopardalis:20060113#p3)。

まぁ、自分が中心で記事を書くだけではなく、他の人にコメントを書くことも大事なコミュニケーションでしょう。まずは、何事も、できることから、楽しく、こつこつと、といったところです。