舞台 TEN COUNT 〜春の章〜

シアターV赤坂


「また〜、こっそり現れましたね(苦笑)」
とか、何人かの方に言われてしまったのですが。

出合正幸さんの主演舞台を見てまいりました。17日14時〜の回のみです。以下、レポじゃなくって感想です。ストーリー解説にしないつもりで書いてますが、でも、思ったこともいろいろあったんで相変わらずだらだら書いてますね。しょーがなないですね。だって、本当に楽しかったんですもの。


会場のシアターV赤坂。入ってみて予想してたものよりも小さいのにちょっと驚いてしまいました。だって、テレビに出てたような人がやる舞台でしょう? 学校の演劇部の舞台の方(体育館とかだから)がでっかいじゃん!なんて失礼なことが頭に思わず浮かんだのですが。けれども、マイクなしの肉声だけでなく気持ちのこもった表情や動きの細かさなどをしっかり見るためには、こういうハコが一番ふさわしい場なのかもしれません。そんな身近さの期待がふくらみます。

そんな距離感の場で、私の席は最前列だったんです! もう、この1回をしっかり目に焼き付けておくしかありません。出合さんが主演をされるんだ、あんなに長い時間をかけてボクシングを身に付けていったから、その身体や動きを見るんだ…、と自分の中に心構えを作って…。

幕が開けてみて、伊藤つかささんはじめ(私にとってはサイトでおなじみになりつつある)カートプロモーションの役者のみなさんが目の前いらっしゃってまずはそのあたりにくぎづけでした。なのに、まずはボクシングジムの問題山積さに唖然です。

そこに現れた天才ボクサー平瞬介(出合正幸)は、救世主となるはずなんでしょうが。いつまでたってもしゃべんないし、カバンを持ったままうつむいているばかり。それでもって、つっぱった上目遣いがまた恐いったらありゃしません。やっと口を開いたかと思えば、悪態はつくは人と関わろうとしないわで、「なんでこんなん?」って感じでしたよ。

自分の身の回りの人と距離を取ってるといえば高丘映士もそうだったので、「映士っぽいかも」なんてちょっと喜んでた部分もあるのですが。でも、映士が最初から見せていた明るさやちょっと抜けた感じというのは微塵も感じさせない、暗く感じが続くばかりでした。

極め付けが、オーナーの娘さんが白血病、そして、瞬介の母も同じ白血病で亡くなっているという設定です。これは反則ですよ! 「泣け」と言ってるようなもんじゃないですか〜。このあたりで私の涙腺の蛇口がゆるみはじめてしまいました。うわ〜ん(ToT)

そんなふうにしていろんな人の想いがわかってゆき、だんだんと周囲の人との関わり、やりとりでボクシングに向き合うようになってゆく瞬介ですが。中でも印象に残ったのは、唯一の肉親である沙耶花と母のことを話すシーンでした。「孤独な天才ボクサー」って設定で言ってても、ちゃんと、肉親である妹や、死の直前までずっと愛してくれていた母がいるじゃないですか。そんな妹に素直な気持ちを話したり、母を思って涙ぐむ瞬介の姿を見て、兄妹や母と子の絆があるからこその、そこにある何か特別な想いを感じました(だから、後の質問コーナーにて、このあたりのこと、演じられたお気持ちをお聞きしたのですが。逆にお礼をされてしまいましたね(^_^;))。

一方の村上裕哉いしだ壱成)です。友人が「目がいっちゃってる」って言い方をしてましたが、ものすごい気迫でした。ジムでの練習シーンでも、友である瞬介を回想するところでも、恋人と接している時でも…。体格は確かに、鍛え続けていた出合さんに比べると筋肉がすごいって感じではなかったのですが、常に身体からオーラが出てるような感じがしました。いしだ壱成さんて、もっとやんちゃなイメージを持っていたのですが。これが、役者なんですね。主役である瞬介に対して敵でありながら、恐そうでありながら、ボクシングにも周囲に対しても一瞬の隙もなく真剣に向き合っているチャンピオンの緊張感をビシビシと感じていました。

最後の対決。各ラウンドをスクリーンで表現しているところは、不思議な感じでした。映画? 舞台? リアル? お芝居? そんな落ち着かない感覚も、生ならではでしょうし、だんだんとふわふわ興奮した気持ちにさせました。でも、最終ラウンドは直接なぶつかり合いでした。瞬介にふっとばされてものすごい音を立てて倒れる裕哉。勝敗は決しましたが、お互いの晴れ晴れとした顔に、「表裏一体の二人。真正面からぶつかり合った勝負の末に、一つの結果が出た、良かった」と、素直に感激いたしました。

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いろんな人間が出てきてそれぞれに背負ったものや悩みがあって、複雑に絡み合うのがおもしろい(見てる方もいろいろ考えちゃうから)のはわかるんです。こういうのが舞台の特徴なのかもしれないですけど。でも…、正直言って、全体が重かったですね。私としては、涙を誘うシーン多数ですよ。途中何度かあったギャグのセリフで笑えましたが、全体的には哀しい色の強いお話に感じました。

けど、そういう哀しい状況を背負っていても、その人の努力や周囲との関わり・信頼でのりこえてゆけるということがストレートに表現されていたかな、という光も伝えてくれるお話でした。

ボクシングって、わざわざ殴り合ってひどいケガまでして(劇中、瞬介は「左目は見えない、耳もよく聞こえない」とか言っていたし)、いくらルールがあったって、身体が強くなったって、そんなのあり? と思っていた私でした。でも、ルールがあるからこそ、そのルールの上でぶつかり合って、ケンカではない真剣勝負をすること、自分の気持ち(情熱)を傾けることに意味があるんだ、というような気がしてきました。私がやってることだって、別の人から見れば全く理解不能で「なんでそんなことにわざわざ頭使う?」って思われることかもしれません。でも、一方で、それを必要と感じたり、認めてくれる人もいます。こんなふうな複雑な関わりがある社会で生きていて、いつどこでどんな人の想いと交差するかわからない…、そんなことも考えてしまいました。

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なんか、いつもにも増してまとまりない文章ですみません。

でも、筋肉すごいのにやせた出合さんはかっこ良かったし、真っ正面で見せてくれたイライラやる気のない表情は本気で恐かったし(これで本当に悪役とかやったらコワイだろうなぁ〜)。

映士じゃない役をやっと目にして、関西弁だったり妹とやりとりして泣いたりしたことにいちいち「えっ? えぇ〜!?」って驚いたり、感情移入したり(影響されやすいので…)。

それでもって、天才ボクサーになるために重ねてきた努力(雑誌インタビュー等で知ったこと)を思い出してみて、そんなことでもワクワクできたし。もちろん、所々にちりばめられたファンサービスも、です☆

一方で、目の前で生で繰り広げられる(オーバーな)フィクションの世界に乗っかることもできました。このあたりは、カートプロモーションを中心とした、出演された役者のみなさんのパワーでしょう。さすがです。

あいかわずグダグダいろいろ考えちゃってますが、そのくらい、夢中になれる楽しい時間だったのでした。