映画「走れ」

カミスガフィルムコミッションの第一回の映画作品、「走れ」を見てきました。


予告です。

水郡線上菅谷駅を“カミスガ”と呼んで、水郡線全体ひっくるめて活性化させようという、カミスガプロジェクト。「2万人が集まるんですよ!!」というのが当たり前の合い言葉になっていて、うちも、2ヶ月ごとのカミスガイベント開催日を親子そろって楽しみにしています(4月に行った時の話はこちら id:camelopardalis:20120601)。

そのカミスガプロジェクトが、映画を作ったのだそうです。これまで、カミスガについて、楽しい雰囲気を伝えたり、ギャグに走ったり、時に静かに訴えるCMを制作されている大内さんが監督です。今までのCM作品は、見知った方が出演されてるという楽しみもありますが、「プロの手にかかるとこうなるのか!」と思えるようなものを見せてくれるので、こちらもひそかに楽しみにしていました。

今日、水戸市での上映会場に入って驚きました。上映時間が午後2時の部という時間帯のせいもあったでしょうが、客席には、おじいさん、おばあさん世代の方がたくさんいらっしゃいます。若者が若者向けのイベントを仕掛けるのはよくある話ですが、こういう世代のみなさん(もちろん人口に占める割合も大きい)にも楽しいひとときを提供できるカミスガプロジェクトは、やはり、ただものではありません。

以下、ネタバレあるので続きを読むで。


でも、私自身がもともと映画っていうものになじみがなかったので、映画の宣伝がされまくってた時期に、なぜこういうテーマの作品なのか「誰か教えてよ!」、と思っていたのも事実です。新聞記事やインタビューを見ても、やっぱり書いてません。どうして、(茨城の美しい風景を見せるのに)母親に捨てられた子供の話を書かなければなかったのでしょうか…。

けれども、見終えてわかりました。

最初に、舞台がここだとわかるのは、常陸太田市の町家というところです。そのあたりに住む主人公の中学生の少年は、幼い頃に自分を捨てた(離婚して出ていった?)母親に会いに、上菅谷に向かいます。地図を見れば、同じ常陸太田市内といえどもそこから常陸太田の駅までさえかなりあることがわかります。

常陸太田市那珂市の風景を見せるのに、大人が主人公では、田舎に住んでたって車で軽く飛ばしていってしまうでしょう。周辺の景色も見てないかもしれません。車なんかで簡単に出て行けず地域に密に結びついて、友達関係の想いに濃い淡いがある中学生くらいなら、この土地で繰り広げられる(ありふれた)小さな出来事が、誰もが思い当たるような当たり前の風景になるのではないでしょうか。そして、そんな中学生たちを上菅谷まで向かうという旅をさせるには、「母親に会いに行く」という、ちょっとハードル高い目的が必要だったのかなと、そんなふうに思いました。

とにかく、出てくる風景が「あー、あれーー!」みたいな。見覚えある場所、訪れたことある場所がいくつかあるのはいいとして、なつかしく感じるところ、いいなと思うところ、古くさかったり、その中に新しいところがあったり、がんばってるのが見えたり、といった感じです。この土地の、そういうところを観光パンフでなく、ドキュメンタリーでもなく、架空の物語の中でたくさん見せてくれています。そういうものがすっと自分の中に入ってくる、物語の力は強いです。

なので、茨城のそんな面をじっくり見たい方には、特にオススメいたします!

最後、少年は母親に会うんですが、多くは語られません。やっぱり「えー! なんではっきり話さないんだよー!」みたいに思う反面、「理由はそのまま思い浮かべて欲しい。感じたもの全てが、それぞれにとって正解でいいんです」っていうメッセージじゃないかと思ったものです。監督さんは、どのインタビュー記事でも多くは語らず、「自由にいろいろなことを感じてほしい」みたいなことを常におっしゃってたのですが、つまり、そういうことなんじゃないでしょうか。

好きなシーンは、OPの、少年がひたすら自転車をこいで走るシーン、かな。車一台くらいがやっと通れる道、信号もないし、すれ違う車もありません。「ヘルメット、かごに入れてないでかぶれよ!」と心の中でツッコミつつ、自分も一緒に走っている気分になりました。