サイエンスカフェ 「災害・トラウマ・共同体」

この日、水戸芸術館で行われたサイエンスカフェに参加してきました。

参加したサイエンスカフェについて書く前に、このイベント全体について説明しなければならないでしょう。

3/3から4/4まで、水戸芸術館では高校生ウィークというイベントが開かれています。もう何年も行われているイベントだそうですが、この期間、高校生と同年代の人は、現代美術に親しんでもらうために展覧会が無料招待となります(本来ならば一般の入場料は800円とか)。ちなみに今は、写真のとおりのREFRECTIONという展覧会が開かれております。

高校生ウィークの期間、展覧会が行われている現代美術ギャラリーの一番奥のスペースにあるワークショップ室にはカフェが出現し(写真はその入り口のところ)、コーヒーや紅茶も飲めるし、本を読んだり、手芸もできるようになっています。さらに、高校生ウィークにはブカツ(CLUB)の活動も4つほどあって、その作品なども展示してあります。

このブカツの一つが「サステナ部」。環境問題などを含め、全ての人達がサスティナブル(持続的)に生きていくにはどうすればいいのかを考える、そういった活動と書いてしまえば簡単ですが。茨城大学にある地球変動適応科学研究機関(ICAS)が関係していると言えば、わかりやすいでしょう。写真はサステナ部コーナーの一部で、部員が選んだ本が並んでいたり、クロスロードというカードゲームが置いてありました。

そして、サステナ部が開くサイエンスカフェが、3/6(土)と3/20(土)に設定され、まずは6日の方、「災害・トラウマ・共同体 ー人間科学から見たサスティナビリティ学ー」に参加してきました。ゲストはこのサステナ部の顧問でもある茨城大学人文学部社会心理学者の伊藤哲司さんです。

えっと、参加費ですが…。多分、大人の私は展覧会入場料を払って入るべきなのでしょう。実際、入館して作品が並んでいる通路をぐるりと通過させていただきました。けど、実はこれより以前に伊藤さんと知り合いまして、サステナ部の部員(このイベントを盛り上げる意欲のある人なら高校生ではなくてもなれる)となったことで、スタッフ扱いにつき無料でした。飲み物やお菓子などは、ギャラリーカフェでのセルフサービスで、もちろん無料です。

というわけで、やっと本番サイエンスカフェです。


前半のお話を聞いていたのは、最大20人くらいいたでしょうか。サステナ部でない他のスタッフさんや芸術館の方も後ろで聞いてらっしゃったりもしてたので、はっきりした参加人数はわかりません。高校生ももちろんいたでしょうけど、サステナ部のスタッフさんが1/3くらい。ちなみにその後ろでは、お話なんて関係なくもくもくと縫い物をしてる子たちとか、その向こうではうちの子供達が絵本を読んだり、スタッフさんにかまってもらってたりしておりました。

お話のメインは、2004年に発生したスマトラ島沖地震による津波の被害を受けたタイのプーケットのみなさんに、災害や悲しみがトラウマになっているのかどうか調査を行ったということでした。つまりは、「共同体が機能していて、どうやらトラウマになってないらしい」という問題提起なのですけど。このあたりのお話は、ICASのスタッフが執筆した本の中の伊藤さんが担当した章でも詳しく述べられていますので、いきさつや細かな事例はそちらを見ていただけたら、と思います。

サステイナビリティ学をつくる

サステイナビリティ学をつくる

後半の対話時間では、10名程度がテーブルを囲んで、お話について質問したり、感想を言ったりしました。ゆるい雰囲気を持ちたかったので、あんまりメモしてなかったのですけど…。悲しみについてのとらえかた、「忘れる」のか「忘れてはいけない」のか、「静かに鎮魂する」べきか「笑いに変える」べきか、都会と地方(水戸?)の共同体の違い、死についての考え方など…。災害や悲しい出来事は身近にありえる話なので、いろいろな話が出ました。参加者の中にはプーケットへの調査に実際に参加された学生さんもいらっしゃって、感じたことなどを語ってらっしゃいました。

また、この場に全盲の方がいらっしゃったことも、対話に何らかの影響を与えていたと思います。その方は、見えないことによる対話…、というよりコミュニケーション全般(例えば、言いたいことをお互いに口にするだけの対話ではなくて「言いたいことがわかった」と思えることとか、握手することとか)についての考えを話されていました。目の見えない方と接するのは私自身初めてだったので、とても緊張しましたね。この緊張も含めて、何か伝わっていると良いのですけど。

さて、私自身の思ったことといえば、共同体がうまく機能することによって悲しみも癒される(悲しい出来事も腑に落ちる)のであれば、自分自身がどうふるまい、共同体を作って(構成して)いったら良いのか、ということでした。ご近所づきあいにしても、育児にしても、科学技術コミュニケーション活動にしても、どういうような共同体がみなにとって心地よく頼れるものになるのでしょうか。でも、だからといって自分の中ですぐにうまい答えが見つかるわけでもありません…。

ところで。話をしている最中に茨城放送(ラジオ)の取材が入りました。写真は、インタビューされている伊藤さんです。

インタビューしている横で参加者同士しゃべっているわけにもゆかず…。正直ちょっと、タイムロスかな、と思わされました。カフェ終了後だったら別に気にならなかったんでしょうけどね。編集後に放送ということなのですが、いつ放送かの情報は今のところ私には入ってきてません。ちなみに私はインタビューされませんでした。

終了後は、残った数名の方がクロスロードのゲームをされていました。こちらは、アフターカフェ、と言っても良いかもしれません。

というわけで、久々にサイエンス(でもテーマはどちらかというと文系)カフェに参加して、テーマについてだけでなく、カフェ運営についてなども、いろいろ考えさせられました。20日の方も参加しますよ。コミケ前日ですが、お近くの方、いかがでしょうか?