まるくておっきくてまっくろで

まるくておっきくてまっくろで
ぼくの前に現れた“まるくてちっちゃくてまっしろなやつ(=あざらしの赤ちゃん)”が、“まるくておっきくてまっくろで”なものを探してほしいと言うのです。そんなわけであちこち歩いたり人に尋ねたりするのですが、そう簡単に目的のものにたどり着くわけでもなく、その度にその小さいやつはビービー泣くんです。それを、かわいいと受け取るか、困らせるヤツと受け取るかで、印象はかわってくるかも…。もちろん探し物はお母さんあざらしですから、最後には動物園へ戻ってめでたしめでたしです。動物園の動物のくせに、普通に人とコミュニケーションできるのはなぜ?とか思ったら、絵本読みとしてはアウトでしょうか(汗)

あまがえる先生 ミドリ池きゅうしゅつ大さくせん (旺文社創作童話)
前に2冊ほど借りたあまがえる先生シリーズ最新作です。実は、この本が(某新聞社による)夏休み読書感想文コンクールの課題図書の1冊になってまして、それが子供の目にとまったことから(でも感想文はやらなかった)このシリーズと作者を気にするようになった、というわけなんです。夏休みが終わったことで、やっとその本とめぐりあえました。

地震によるひび割れで水が減ってしまったミドリ池の生き物達を救うべく行動開始したあまがえる先生と、それに協力する森の動物達。無惨に水が減ってしまった池の中には食べたり食べられたりの関係の生き物達もいるのに、先生の言うことを聞いて一時休戦したりするところが何とも不思議ですけど。森に落ちてたペットボトルを集めて川から水を流してくるのは圧巻ですね。

しばらくすると、今度は別の場所で、大雨の影響で川が氾濫です。またもや、小さな生き物達の救出に尽力する先生たち。

著者紹介を見てわかったのですが、この本は、新潟県中越地震によって被害が出た、そのことをもとに作られているそうです。最後のページ、

「ちきゅうで いきていくって、たいへん。」
「いきてりゃ きっと、いいことも たくさんあるよ。」

という言葉が印象に残ります。

しかし、先生が被害を知るきっかけになる「どうぶつしんぶん」。何度見ても飽きないですねぇ。

ウォンバットのにっき (児童図書館・絵本の部屋)
タイトルどおり、ウォンバット視点でウォンバットの語り(書き)で書かれた絵本です。「あさ:ねたいた。」「ひる:ねていた。」…。文字数の少ない、あまりに簡単な日常に最初は驚きなんですけが、やがて、ウォンバットは人間の畑に現れて作物を食べるようになります。人間にとっては、畑を荒らしたり、家や道具をかじったりする、いたずらと言うより被害をもたらすだけのヤツにしか見えないんですけど、本人(ウォンバット)としては「にんげんをしつけてやってるんだ」というつもりであって、それが何とも言えない(憎みたいのに憎めない)感じを出してます。ここに出てくる家族も、案外そう思ってるのかもしれません。

はしれ!たくはいびん
どう見てもクロネコさんカラーの車。宅配便のお仕事のお話です。田舎のおじいちゃん、おばあちゃんから送られたりんごが、宅配便の仕事によって街の子供達の家まで届くという、それだけなんですけど。途中の街並、道路、配送センターの様子などが細かく描かれていて、楽しい絵になっています。無数にある荷物の箱の中から、そのりんごの箱を探すのにも、子供達は熱中してしまうのはいつものことですね。

日本の神話〈第4巻〉いなばのしろうさぎ
誰もが知ってる日本の神話です。けど、それだけではありませんでした。うさぎを助けた大国主の命は、その後(も)、兄達のたくらみによって何度も殺され(かけ)てしまいます。最後には、逃げのびるために“黄泉の国”へと旅立つというラストでした。

子供に読んであげたらかーなーり不評でした。やっぱり、殺したりするシーンは例え文字だけであっても残酷だし(苦しむ絵があればなおさら)、なのに、(神だから)生き返ったりするところが不思議すぎで、理解に苦しむといった感じでしょうか。ボキャブラリーが少ないもので、「キモイ」とか連発してましたけど、まぁ、多分そういう嫌な感覚をそう表現するしかなかったんでしょう。私もこの続きと結末には驚きでした。

本には、作者(文と絵)の解説がついておりました。しろうさぎだけどそのしろとは裸の意味で、うさぎとしては茶色ではないかとか。ワニとはサメのことではないか、とか。最後に向かう黄泉の国も「生命の根源地」という意味なのではないか、などなど。書かれてしまえば「へぇ〜。なるほど」なんですけど、そこまでいろいろ調べなくては絵本として仕上がらない、というところがやはりすごいです。

ところで、何でこの本を選んだの理由についてです。CoSTEPの講義の中で湿潤療法を紹介してくださった先生がいらっしゃって、先生のお話の中に「いなばのしろうさぎの故事にならって」とあったのを、今頃思い出したからです。「海の水で洗って(これって消毒?)乾燥させる」のではなくて「真水で洗って、蒲の花粉の上にころがる」というのが絵本の内容でした。蒲の花粉は実は漢方薬だそうで、これが「潤す」療法とは決めつけにくい気もしましたが、どうなんでしょうね。

フィフィのそら
村上康成さんの絵本。あいかわらず、文字は少なく、動物達も簡略化、でも、特徴もしぐさも本物そっくり!って感じです。ドラマがあるけど、なんかかわいい、なんかほっとする1冊です。今この夏の終わり(というより初秋)じゃなくって、初夏に読みたかったですね。

まちがい王さま本になる (寺村輝夫・ちいさな王さまシリーズ)
小さな王さまシリーズ。おつかいをたのまれた王さまはまたおつかいの内容を忘れちゃって、そのまま夢(?)の世界でふらふらと冒険です。あいかわらず、どこで夢に突入したかわからない不思議さに、読んでるこちらは「あれあれ!?」ってなっちゃいますが。この展開に「またか」と思うか、それとも「キター」と思えるかで、楽しめるかどうかが分かれる気がしますね。今回は、その冒険が実は本の内容だった、というオチで、うまくまとまったな、って感じでしょうか。