天文学会@九州国際大

天文学会@北九州


家族そろって、日本天文学会年会へ行ってまいりました。ここは、簡単に言えば、日本中の天文学者が集まって、研究発表したり、交流を深めたりする場です。前にも何度かここに書いてきてますが、会場内の1つの部屋を使って保育室が設置され、子供を預かってくれるので(無料ではないです!)、子持ち家族にも参加しやすい学会なんです。

前日にひかりレールスター個室にて、小倉入りしました我が家でした。個室にしたのは、当然、子供がうるさいし何するかわからなくて、他のお客さんに迷惑かかるかもしれないから、だったのですが、おかげでかなりリラックスできましたよ。お昼の駅弁2〜3個を一つのテーブルに置いて、家族4人でつつきまわすこともできるし、変なかっこうで座席に寝そべっても誰に見られるわけでもないし。…って、これってほとんど、だらだらしたい親のため?

保育室は大変!

さて、19(月)の朝10時、子連れで大学に到着、保育室に子供を預けよう、と思ったら…………、スタッフがいない!? 部屋はあっても保育士さんがいないんです。もちろんおもちゃもない。学会の保育室担当の方が、真っ青になって携帯で話しながら走りまわっているではありませんか。

いつも、その土地で保育園を経営したり、ベビーシッターを派遣している会社に、きちんと天文学会のスタッフが頼んでいるはずなのですが、今回に限って、先方の会社さんが当日の人員手配のみを忘れていたそうで(と後で聞いた)、こんな予想外の事態となっていたのでした。仕方がないので、当日の学生スタッフやらで、保育士さんが到着するまで何とかしのぐ、というのです。聞きたい天文教育の講演はすぐだし、夫が「先に行っていいよ」と言ってくれたので、子供を置いて私はその場を後にして講演のある会場へと向かったのでした。

教室に着いてすぐに、ハワイのすばる望遠鏡のH先生(女性天文学者)にお会いしたものですから、「○○、××なわけで、保育室が大変なことに!」とこそっとお話したら、先生ったら「それは大変」と、教室から出て行かれてしまいました…。す、すみません。本当にありがとうございました。

所属がないくせに質問もしたし、とりあえずひととおり講演を聞き終えたところで保育室へ戻ってみたら(11時半頃)、私服の保育士さんが2、3人もう来てらっしゃったので、とりあえずひと安心いたしました。H先生もいらっしゃって、子供達の相手をしてらっしゃいました。まぁ、当の子供達は、相手が誰であろうと遊んでくれるし、ほんの少しでもおもちゃはあったみたいだし、あんまり驚くこともなかったかもしれませんけどね。今回の利用者は1歳からの幼児が数人程度で、手がかかって難しい0歳赤ちゃんがいなかったのが、そういう意味では幸いだったかもしれません。

そんな事態の初日ではありましたが、手持ちの何でもない紙に子供の名前をちゃんと記録したり、今日あったことを書き留めて渡してくださって、子供たちとちゃんと楽しく遊んでくれた保育士のみなさん、やっぱりさすがでした。写真は、2日目、エプロンをした保育士さんと保育室で遊ぶ子供たちです。

ところで。さらに縁遠くなって難しくなった講演を聞くのもいいのですが、ついつい、暇な時間は(預けていいのに)保育室へ行って子供の様子を見つつだべってしまうのは、そこが今の私にとって、何となく居心地がいいからなのかもしれません。

でも、そこで結局、初対面の保育士さんと話題になるのは、「天文学会なんですかぁ〜、何人ぐらいの人が?」から始まっての、一体ここで、誰が、どんなふうに、何をやってるか、ということです。折角、縁あって天文学者の集まりのお手伝いをして、子供たちを預かってもらうことになったのですから、何なんだろう?と思われるだろうし、こっちも「聞いて欲しい」と思って、会話にも熱が入ります。「やっぱりね、同じところで知りあって結婚する人も多いから、夫婦で天文の仕事をすると、一緒に出張する必要があって、そういう時にこういう保育室があるととってもありがたいんですよ〜」なんてのをせっせと説明する私です。そうするとさらに話はノリノリになってきて、保育士さんが「私、子供の頃プラネタリウムとかよく行ったんですよ〜」とか、「まだ流れ星を見たことないんですけど、どうやったら見れます?」なんて、ふくらんでゆきます。まさに、元天文解説屋で、コミュニケーターを目指す私の本領発揮ですっ!(ってただの井戸端会議だけど)

ちょっと探せば本に書いてあるとか、観望会へ行って見ればいいとか、そういうのではなく、こうしてじかに会話(=双方向コミュニケーション)することの、この楽しさと効果! 実感せずにはいられません。関連して、これもこの会場である先生ともお話したのですが、子供を対象にして「理科離れを防ぐために、科学のお話をしましょう」ってのはよくあるけど、先生にもっと接してもらうのも大切でしょう。ならば学校の先生にも教える、っていうのもよくある話ですが、もっともっと小さい子供が幼児期に接する保育士さん、というのも、重要なターゲットになるべきではないかという意見で一致いたしました。もちろん、折角のこの保育室、何とか利用できないかとも。まぁ、もっとぶっちゃければ、天文や理科に「はぁ?」ってなっちゃう普通の市民の人と、もっと接する機会を持ちたいし、こういう絶好の機会は大事にしたいなぁ〜、と、いつもながら私は思った、ということなんですが。

講演もちゃんと聞きました

学会って、研究に縁のないみなさんて、どんなイメージを持たれるでしょうか? 多分、スーツ姿で、偉い先生の難しい話を聞くってな感じかもしれません。そういう学会もあるかもしれませんが、天文学会はかなり異色のようです。

ネクタイ姿の先生もいらっしゃいますが、多くがみんな普段着。ジーパンにTシャツでも何にも文句は言われません。研究成果の発表の場ではありますが、研究を始めたばっかりの院生のデビューの場だったりする場合もあります。その場合、発表や質疑応答の実践の場でもあり、よその大学などの人の貴重な意見をもらう場でもあります。最近では天文学会も、講演数も参加者もめちゃくちゃ増えて、8会場(教室)並行で発表が行われています。から、聞きたい話が同じ時刻に重なってしまっているなって、ほとんど当たり前。だから、「研究発表を聞く」というより、普段会えない研究者仲間と会って交流するのが、大きな目的となっている、と思ってもいいと思います。ここで知りあっておけば、「詳しいお話は後ほど」で、メールでも何ででもできますし。

これは、ポスター会場があった建物の階段から撮った、中庭で交流する研究者の皆様です。上に見える建物に、B〜Hの講演会場がありました。

あと、お金さえ払えば、どこかの大学や研究所に所属してなくても、誰でも発表できるんです。そのシステムのいい使われ方は何といっても、アマチュア天文家の方が研究発表をできることです。流れ星の観測なんて、アマチュアの方が本家って言ってもいいくらいでしょう。でも、あまり良くない方が、エセ科学な人が発表できちゃうことです。今回も、予稿タイトルを見ただけでも、何だかよくわかんないのが何本かありましたが…。

そこで思うのは、やはり、「学会発表されただけもののが、またまだ信頼性の低い研究」ということです。だって、このとおり、エセ科学の人だって発表だけならできちゃうんですよ〜。研究成果が、論文として学術雑誌に提出され、診査を経て掲載されて、初めて、認められた研究となるのです。出発前にCoSTEPで医療統計の見方の講義を聞いて、医療における(他もそうだけど)情報(健康情報)の信頼性の順番の説明も見てきたばかりなので、まだまだ一般の人には、報道されるどの研究成果が信頼性が高いのか、どの分野でもわかりにくいよなぁ〜と、思ってしまうのでした。

なので、私の頭の新しいところにその坪野先生の医療統計の話があるものですから、天文の発表を聞いていると、ついつい「これってほとんどが『症例報告』みたいだよなぁ〜」なんて思ってしまいます。だって、「○○な天体で××というのを観測(発見)しました。」で、その解釈をするわけですから、統計なんてほど遠い!? 天文学の性質上、仕方ないんですけど。だって、とにかく何もかも遠いし同じような例も少ないですから、同じもの(天体)をたくさん観測して集めるだけでもかなりの苦労です。先日の冥王星が惑星でなくなった(他の典型的な惑星とは違う仲間だった)ていうのだって、いい例でしょう。「惑星」かと思ってたら、観測が進んでもっとたくさんの太陽系の天体が発見されたら、実は、冥王星はその近くにあるもの達と似てて、他のもっと内側を回る主な惑星とは違う仲間だった、というわけですし。

ただし、天文学では理論計算やシミュレーションが可能です。条件を決めてあげて、コンピュータ上で再現してみることができます。それが、観測結果と合っているかどうかを比較します。人体や病気に関してそういうシミュレーションなんてほとんど聞いたことないのは、体が本当に複雑なんだからなんでしょう。それぞれの研究対象の性質によって、研究は進められ、それぞれで今わかっている中で何が真実により近いのか、見極めてゆくしかないのです。

最後になって目的を書くのも何ですが、とにかく今回の学会では、「私は北大のCoSTEPで『サイエンスコミュニケーション』の勉強を始めました」と、久しぶりの先生方、あの時一緒に勉強したみなさんに、自己紹介をして歩くのが目的の一つでした。そして、嬉しいことに、CoSTEPや、その、天文だけにとらわれない科学コミュニケーションに興味を持ってくださる方もいらっしゃいました。なんとなく天文研究分野とは遠ざかりつつあるような私ではありますが、これからも仲良くして情報集めしつつ、私なりの自由な、市民の欲求に即したコミュニケーションを目指したいと、改めて思ったのでした。

学会らしく、どなたかの講演の写真を撮りたいなぁ〜と思ってたのですが、誰がいいかわからなくて何となく撮りそびれまして。最後に、天文教育フォーラムの開始前の写真を掲載しておきます。こんな感じでした、ということで。